さわやかが食べたくて自転車で浜松に行った話

京都~浜松間は230km

みなさんこんにちは。最近初恋の人がパパ活をしていると聞いて虚無の表情になったさとうです。先日、さわやかが食べたくて15時間自転車をこいで浜松に行った話を書きたいと思います。自粛中の暇つぶしにでもお読みください。

 

1、なんでそもそも浜松に行こうと思ったのか。冷静な判断力がある人なら検討すらしないことをどうしてやっちゃったのか。3月の中頃、サークルの先輩が放った衝撃的な一言がきっかけでした。

僕「先輩ずいぶん目が死んでますね?どうしたんですか?」

先輩「実はママチャリで浜松行って来てさあ~」

僕「何時間かかったんですか!?」

先輩「ん~18時間ぐらい」(一日は24時間です)

 

それを聞いた瞬間‘‘やられた‘‘と思いました。そんなイカれて面白そうなことで先を越されてしまった。というか自転車で浜松は行けるのか。僕はいてもたってもいられず浜松に帰省している肩幅の広い友人に連絡を取り、泊めてもらうこととなりました。

 

2、準備

友達に約束したからには後には引けません。いやだなあという気持ちが加速していきましたがかろうじてさわやかへの執着が僕を引き留めてくれました。僕は食いしん坊なのです。自転車を一応メンテナンスしておこうと思い下鴨のきゅうべえに向かいました。

僕「すみません、自転車をメンテナンスしてください~」

店員さん「、、、これは、買い替えたほうが安くなりますね、、

なんてこった。この時点で出発前日の3時。店員さんによるとフロントフォーク、サドル、ブレーキ、チェーンなどがもうだめになっているそう。実はこの自転車は父親が16年前に買ったもので、そのおさがりを乗っているのだがあちこちにガタが来ていた。

この時点で浜松に行くとは言い出せなくなってしまい、「琵琶湖に行くんですよね~」と言った。一応琵琶湖は通るので嘘はついていない。

命にかかわる部分なのでブレーキ周りを調整してもらって油をさし空気を入れ準備完了。この時点で不安がいっぱいだった。

 

 

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 本来であれば早く寝て明日に備えるべきなのだが、僕がうっかり鶏むね肉4キロを買ったことにより、カレー部でスパイスから揚げを作りまくって食べるイベントがあった。たらふくスパイスをキメて多幸感に包まれて帰宅すると日付が変わっていた。

慌てて就寝し、4時半にアラームをかけて5時に出発する予定だった。この睡眠不足が後で大きな苦しみを産むとはこの時誰も想像していなかった。

 

出発

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 出発する前にルートと持ち物を確認しておこう。

京都の自宅から山科を抜けて近江大橋を越えて、国道421号線鈴鹿山脈を抜けていなべ市から名古屋に向かう。名古屋からは国道一号線でひたすらに平らな道を100キロほど漕いで浜松に着くとゴールだ。

 

ここで230キロという距離の果てしなさがいまいち伝わらないかと思うのでわかりやすく例えると、京都駅から大阪梅田まで2往復してついでに比叡山に登るぐらいの感じだ。きっつぅ、、、。

 

持ち物

スマホ、財布、タオル、フリース、スパイスおにぎり×3、スマホ充電器、ヘルメット

 

本来ならパンク修理キットが必須なのだが、パンクのリスクは考えないものとした。

 

そんなこんなで朝起きて、飯を食い5時に出発した。蹴上を越えて山科へ向かう道で寒さと旅路の果てしなさに心が震えた。(急に詩的)

ところで皆さんは山科から大津に抜けるときにグーグルマップがおすすめしてくる道をご存じだろうか。通常自転車が通る国道一号でなく、小関越えという急な山道がおすすめされるのだ。Googleの罠にまんまとはまってしまった僕は必死で山を登った。まだ全行程の5%ほどでこの疲労感。不安が募った。

 

なんとか滋賀に抜けるころに朝日が昇った。僕は極めて単純なので太陽が出ただけでめちゃくちゃポジティブな気持ちになり、浜松まで行けるという自信がわいてきた。ビバ太陽。

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近江大橋からの朝日。心が励まされた。

朝日により元気が出たものの、依然として僕の中には不安があった。それは「この自転車で鈴鹿山脈を越えられるのか?」というものだった。
鈴鹿山脈は滋賀―三重間を隔てる山脈であり、かなり標高がある。僕は421号から石槫峠を抜ける比較的勾配の緩いルートを取ったのだが、それでも標高が690mある。不安を胸に草津栗東を通り抜けた。

 

ママチャリで浜松まで行った先輩は18時間かかったらしい。時速に直すと13キロほどだ。僕は平坦は何とか20㎞/hで頑張って15時間以内に到着しようと計画していた。
「この道が浜松まで続いている」考えてみれば当たり前なのだが、自転車をこいでどこまでも行けるような気持ちが湧いてきて高揚していた。

 

そんなこんなでスパイスおにぎりを食べながら国道を進み、太郎坊宮(鈴鹿山脈のふもと)まで来た。徐々に緩く長い上り坂が増えてきて峠へのプレッシャーを感じる。あまり足を使いすぎないように軽めのギアで回したのでやけに時間がかかった覚えがある。

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この奥の山を越えて三重に行く

天気は良く風もなく絶好の条件だった。気持ちのいい田舎道を無心で漕いでいった。

この辺りは永源寺という寺が有名らしく少しだけにぎわっていた。滋賀にも観光地はあるんだなあ。

 

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飛び出し坊や

これはマジでどうでもいい情報なのだが、永源寺のある東近江市がこの飛び出し坊やの発祥の地らしい。道の駅で飛び出し坊やが前面に押し出されていて、ほかにもっとないんかよと思った。

山道を30分ほど登り奥永源寺渓流の里に到着。ここが山の半分ぐらいの地点だった。この時点で10時。悪くないペースで来ていたが、ここで「帰るか、、?」という悪魔のささやきが浮かび始める。

この時点で体は結構疲れており、さらに峠を越えてしまえばもう引き返すことはできない。かなり日陰で逡巡したが、ここで折れたら負けだと思い一歩前に踏み出した。

 

ここから5%を超える坂が4キロほど続く。じりじりと照り付ける太陽を恨みながらひたすらに漕ぐ。後半辛くなってきたので奇声を発しながら登った。しんどくなった時に奇声を上げると思考がクリアになり突き進むことしか考えられなくなるのだ。

 

奇声を上げて何とか坂を上り切った俺はついに石槫トンネルに到着した。感無量だった。石槫トンネルは4キロの下り。何もしなくても速度が出て気持ち良かったのだが、とんでもない落とし穴があった。

 

狭いくせに中央分離帯がある

 

乗用車が抜かすときはすれっすれになり、トラックは俺を抜けないため後ろに張り付かれる。トンネルの横の待避所に自転車を止めてトラックを先に行かせるのだが、生きた心地がしなかった。過去最高に金玉がヒュンヒュンした。

 

何とか無事にトンネルを抜け、ひたすらに気持ちのいい下りを堪能した。ドーパミンがドバドバ出た。いなべの田舎道をひたすらにこぎ、気づけば桑名に入っていた。

 

なんだかでっかい川があるなあと思ったら揖斐川長良川木曽川だった。ナイル川ぐらい大きかった。社会科の教科書で輪中とかやったな~と思い通過。

この辺りから国道1号線に合流する。

 

ひたすらに平らな道を淡々と漕ぎ続ける。体力をある程度残して鈴鹿山脈を越えられた時点で勝利を確信した僕は、無理のない速度でひた走った。そうすると名古屋についていた。おお~名古屋だ~と思ったもののひつまぶしを食べてる暇はないのでそこら辺のコンビニでお昼休憩をとる。おにぎりを4個、チョコモナカジャンボを食べた気がする。20分ほど休み出発。何せ時間がないのだ。日没までに友達に会いに行くメロスの気分だった。

 

コンビニを出た時点で残り100㎞。ここでさらなる試練が襲い掛かってくる。

 

     めっちゃくちゃ眠い

 

 そう、俺の前日の睡眠時間はなぜか4時間。ご飯を食べたことによりあり得ないほどの眠気が襲ってきた。道がひたすら単調なこともあり、瞼が下りていく。

運動中に眠気を感じるという体験は初めてだった。やむなく歩道でのんびり走ることにした。

実は名古屋から豊明あたりまでの30キロの記憶がほとんどない。途中でカフェインを取ろうとコーラを飲んでから徐々に覚醒してきたように思う。

 

ひたすらに無心でペダルをこぎ、知立安城~岡崎を越えていく。この辺りはトラックが多くて運転が荒く、かなりストレスだった。眺めが余りにも殺風景で、京都とはエラい違いだと愛知を小ばかにしながら走った。

岡崎の時点で5時になってしまった。残り60キロ、日没は避けられないことが判明し、せめて日没までに距離を稼ごうとパワーを絞り出して漕ぐ。気合で漕ぐ。

 

頑張ってこいだ結果、浜名湖の手前で完全に日が暮れる。あと16キロ、さわやかへの思いを胸に足を回し続ける。とっくに体力は空っぽになっている。

 

午後8時40分。友達の家に着いた。

 

普段着で「おう、おつかれ~」とにやにやしながら言ってくる友達の姿を見た瞬間に泣きそうになってしまった。達成感と安堵感が一気に襲ってきた。あの時の感情は忘れなれない。230キロ漕がなければわからなかっただろう。

 

友達の家からすぐのさわやかに行ってハンバーグを食べた。

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おそらくめちゃくちゃうまかったのだが疲労と眠気がピークであまり味わえなかった。味わうのにも体力が必要なんだね。

 

さわやかを食べ、友達の実家にお邪魔して9時間ほど爆睡した。起きると雨だったのでやむなく輪行(自転車を袋詰めして電車に乗せること)した。金券ショップで初めて青春18きっぷを買った。

 

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浜松駅での証拠写真

さて、これで僕の旅は終わった。来た時とは段違いの速度で過ぎていく景色を眺めながら、230キロは電車で行く距離だなあとしみじみ感じた。これに懲りて僕が自転車を漕がなくなったかというとそんなことは勿論ない。

この話を家族にしたら父親が面白がって誕生日におさがりのロードバイクを送ってくれた。今僕はそれに乗って下宿と京北町を往復しまくって農業をしている。

この長旅がなかったらそれは実現しなかっただろう。粘り強く頑張り続けたら浜松まで行けるということが実感として分かったのでそれだけでも意義のあるものだった。

 

みんな、浜松行こうぜ!!